お願い、抱きしめて
菜子さんの肩口に顔を埋めて、涙声を必死に隠す。ふわっと髪に触れたのは、温かい手。
菜子さんの手が髪に触れて頭を優しく撫でる。
ボロボロで壊れかけの心に染みる甘い、甘い薬──…
触れてる髪とは反対に熱い心。好きの文字が、自然と頭に浮かんで、愛しさも、切なさも増す。
菜子さん、好き…、好き…。
その言葉しか思い浮かばない。それ以外の素直な気持ちが表れない。
16歳のオレには、好きしかわからなくて、好き以外を知らない…。
触れる温もり、肌で感じる好きの大きさ。
どれも菜子さんが教えてくれた感情。菜子さんにしか表れない感情。