お願い、抱きしめて
──また、図書室においで。
──音也くんには…まだ早いかな
甘酸っぱい思い出がシャボン玉みたいに浮かぶ。鮮やかに色をつけて。昨日の事みたいに。
いつから好きになったんだろう。いつから…。
過去を探る記憶の中には、いつも菜子さんがいた。目を閉じても、脳裏に浮かぶのは菜子さんの顔。
好きになった理由も、好きだとわかった時も、どれも曖昧でぼんやりしてる。
だけど…初恋で、とっても大切で、胸を締め付ける痛みは好きの証。好きの証拠。
口に出して言えない言葉は、会えなかった時間に比例して大きくなって、好きから大好きへと変わり始めた。