極悪彼氏
起きあがったオヤジはタバコに火をつけた。



昔から変わらない懐かしい匂い。



オヤジが帰ってきた時の部屋の匂い…。



「俺から逃げんのか…」

「そうかもね。でも今更迷惑でしょ、オヤジ面されても。コタもコタで好きにやんなよ」

「何でそうなんだよ!!」

「えっ…?」

「文句あんなら言えよ!!ムカつくならムカつくって言えばいいだろ!!」



俺がいらねぇならいらねぇって…はっきり言えよ…。



そうしてもらった方が未練なんて残んねぇよ…。



なのに…。



「ムカつくバーカ」

「は?」

「俺もバカだけどさ、コタは息子でしょ?たまには素直になって頼ったりされてぇよ!!」

「今更父性芽生えてんじゃねぇ!!」

「仕方ないだろ!!何でかわかんないけどコタがカワイイんだから!!」

「気持ちわりぃんだよ!!」



この日、日付が変わるまでずっと口げんかをした。



今までのムカつくことをお互い語り尽くし、疲れ果てて眠った。



どさくさに紛れてオヤジが帰る話はなくなったけど、オヤジが来てから初めて深い深い眠りにつけた。



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