古城のカラス
セラはその絵をじっと見つめた。
やがて鉄格子の中に座る人間がピクリと背中を動かしたので、セラは小さく悲鳴を上げた。
それでも食い入るように小人を見詰める。
襤褸切れを纏ったその背中に、なんだか見覚えがあったからだ。
やがて小人は此方を振り返った。
その顔を確り確認して、セラは驚愕する。
「父様!!」
小人は檻の外で見下ろしている娘の存在に気付いたらしく、立ち上がって駆けだすと灰色の格子を両手でつかんだ。
『セラ!セラなのか!!』
「お父様、どうしてこんな…っ」
『お願いだセラ、私をここから出してくれ!!』
そう叫んで囚人は泣き叫んだ。
真っ黒い煤がこびりついた手で格子を掴み、びくともしないそれをなんとか外そうと暴れている。
お願いだ、お願いだ、と何度も請う。
「残念だがそれはご遠慮願う」
その低くて冷たい声色で、ルークは彼女から本を取り上げページを閉じてしまった。
うわあ、という叫びとともに何かがぶつかる鈍い音も聞こえた。