社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「優子ちゃん?」
「卓土さん」
「うん」
「あっちにあるお店に私行きたくなりました」
早く今いるこの場所から離れたい。
拓斗さんが居るホテルの建物が見えなくなる場所に今すぐ行きたい。
そんな衝動に激しく駆られた私は卓土さんの腕を強く掴んで歩き出した。
さっきとは逆だ。
「何処の店?」
さっきは私が引っ張られたのに今は私が卓土さんを引っ張っている。
卓土さんの顔を見ていないからどんな顔をしてるか分からないけど、きっと驚いてると思う。
ビクッてしていたもん。
私が卓土さんの腕を掴んだ時。
「優子ちゃん?」
「……」
「いきなり急ぎだしたけど。もしかして優子ちゃんにとって嫌な事あった?」