社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)



申し訳なさそうにそう言った卓土さんにハッとし、私は動かしていた足をピタリと止めた。





「ご、ごめんなさい…」





謝りながら強く掴んでいた卓土さんの腕を離す。





「別に構わないよ。それよりも優子ちゃん、何かあったの?」





俯く私を卓土さんが心配そうに顔を覗いてきた。





「いえ、あの…」





何かがあったのは確かだけどその事実をそのまま伝えたくはない。


どう答えればいいんだろう。


私は卓土さんに…


うーんと考えながら口を動かす。





「トイレがしたくて」

「トイレ?」

「それで探していたんです。トイレしたいって言えなくて」





恥ずかしいけどこれしか思い付かない。



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