社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「そうしたいと思っています。私は優子さんの笑顔が好きで、毎日見ても飽き足りないと思いますから…。必ず笑顔は絶やさない家庭にします」
そう言った飯田さんはさっきよりも私の肩を抱く腕に力をいれてきて、バランスを崩しそうになるのをグッと耐える。
「では、そろそろ向かってもいいでしょうか?」
――そう、ここは教会でもなければ式場でもなく私が18年間慣れ住んできた家の玄関で。
ちなみに飯田さん以外は普通の服装。
「もう優子は三浦優子じゃなくなるのね」
「母さん最後は笑顔で見送ろうよ」
最後にもう一度。
お母さんに抱き締めてもらい私は飯田さんの車の助手席に乗った。
「出発しても?」
「はい。お願いします」