社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)



車が進みどんどん家から遠ざかっていく中で、ラジオもかかっていない静かな車内にハァーという飯田さんの溜め息が響いた。





「何処か行きたい所は?」

「え」

「提、役所の後に」

「別にないです」





その後、飯田さんは何やらぶつぶつ言ってたけど小さ過ぎてよく聞こえなかった。


――区役所へ向かってる最中に私は色々と考えてた。


これから飯田さんと結婚してちゃんとやっていけるのかって。


だって私は何も知らないし。


なんたって飯田さんと会うのは今日を含めたったの‘4回’なんだもん。





「聞いているか?」





たった4回で飯田さんの事を私はどれくらいの事を知れたと思う?


答えは年齢と職業。


冗談じゃなく本当にそれだけ。



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