閃火高遠乱舞


「宝王子、お前はどうする?」
「え…」
「新川もとうの昔に覚悟を決めた。お前が最後だ」
「……」
 新川もまた、特別な家系だという。
日本という国に深く根付いている、混沌そのものだと。
 宝王子は帝を見た。
帝は静かな瞳を、真っ直ぐに注いできている。
微塵も揺らぎはない。
「…俺は……」
「……?」
「俺は、帝を護る。それだけです」
 帝は日本。
日本は自分たちが護らねばならぬか弱き存在。
大切なもの、愛しいものばかりを抱いた、稀有な宝箱。
 そうだった。
自分は、大切なもののために刀を握る決意したのだ。
 迷いはもう、ない。
 帝もそれは感じたのか、目を伏せると席を立った。
大山が付き添うように腰を上げる。
「そうか」
「またね、王子!!」
 二人は何事もなかったかのように宝王子の部屋を出て行った。
 窓からは澄んだ青空が見える。
風もきっと、そろせろ冷たさを帯びてくる。
秋はもうすぐだ。
そして、秋が過ぎればまた戦が始まるはず。
力を求められる場面が、必ず来る。
 宝王子は鍛練場へ、気持ち新たに足を進めた。







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