閃火高遠乱舞



 晩夏、日本軍は反逆の衝撃を受けたままの状態で、中国に攻め入られた。
 中国は、自分たちは世界の中枢にあるとしており、その歴史は遥かに長い。
そのぶん秀でた武将も多く、精鋭ばかりが揃っていた。
住民の多さと国土の広さもまた、それを助長している。
 中国が軍を向かわせたのは、北海道。
北から攻めようという魂胆だろう。
むろん、日本とて黙って侵略を許すわけにはいかない。
日本軍北海道支部を中心に、帝は将を派遣した。
 大将は御自ら出ると告げた帝。
部将は宝王子と林、大山だ。
聖徳と新川は第二波を警戒して、総統司令部待機だった。
 さて、中国の軍勢を率いているのは、国会首席である郭勇瞬ではない。
五虎将軍と呼ばれている内の一人、飛青龍だ。
 青龍は信義あふれた人物として名が広まっている。
もちろん、その武術も並々ならぬものだ。
獲物は槍。
新川と同じである。
 白馬に跨がり突っ込む一団に、日本軍は手が出せずにいた。
速いだけでなく、強固でもある。
トップに飛がいるからか、日本の陣営がどんどん押され、崩れ、壊れていく。
敗走するところも多くなってきた。
 山代が残した波紋は、いまだ根強くある。
冷静に見せてはおれど、宝王子は混乱していた。
そこに、この襲撃である。
混乱はますます度を増し、何が起きているのかも分からない。
「王子!そっちに行ったよ!!」
 目の前に駆けてくる戦団を確認した宝王子は、自棄になった。
もうどうにでもなれ、と投げやりになり、それが冷静な判断を呼び起こすことに繋がった。
 刀を抜き、前方にいる飛を見て喚声を上げる。
そのまま「疾風」を率い、対峙した。
「俺は宝王子神楽!陸軍『疾風』の部将だ!!かかってきなよ!!」
「私は中国の飛青龍。通してもらえないなら、通るまで!!」
 速度を落とさぬまま、双方は衝突する。
今の今まで不安げだった「疾風」の兵たちは、立ち直った宝王子に歓声を上げた。
怒涛の戦いが繰り広げられる。
 槍が突き抜け、刀が薙ぎ払い、矢が降り注ぐ。
しかし、それに怯む者はどちらにもいなかった。

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