閃火高遠乱舞


 翌日。全世界に、速報が流された。
「本日未明、今まで沈黙を守っていた日本が行動を開始。第三勢力となることを宣言しました」
「日本は我々に助力を求めてきた。何の裏もない、一国対一国の話し合いだ。その堂々とした姿に、私は感銘を受けた」
「本日正午、日本軍帝は平和宣言を行います。国民の皆さま、どうかお見逃しのないようにお願いします」
 様々な国が、様々な反応を見せる。既参戦国は大々的に日本軍参戦を報道し、助力を求めた小国は日本の潔癖さを伝え、日本は今戦にかける帝の在り方を国民に知らせようとしている帝をバックアップした。
「ものすごい反応ですね」
「次々と参戦を表明する国が出てきています」
 林と大山がモニターの前で作業しながら口にする。林の担当はニュースを分割して流すこと。大山は海外の反応を逐一チェックすることだ。
 大山が、大量の参戦国レポートを帝の執務机に置く。机の上は、もう隙間がないほど山ほどの紙で埋め尽くされていた。
「反応は上々だな…林、第二ニュースを流せ」
 聖徳が光速で指を動かしながら、林に指示する。その間にも、参戦国の一覧や礼状の作成を怠ることはない。
 その指揮に従って、林がパソコンを操作する。
「最新ニュースが入ってきました。現在日本側についている国、およそ十カ国。繰り返します……」
「此度の参戦は地球の平和となり、我らの永遠の誇りとなろう!永久なる友に光あれ!!」
 一方、取り残された二人は街に降りてきていた。人々はその白い軍服に敬意を表していた。新川はその視線に耐えきれず、めずらしく羽織っていた上着も脱ぎ捨ててしまっている。
「すっげー目立ってんな…」
 鬱々と吐き捨てる宝王子の手には刀はなく、かわりに大量のタオルやら酒やらが抱えられている。新川の手には野菜やら果物。どれもすれ違った民から贈られたものだ。
 二人の役目は、戦争に厳しい国民の反応を見ることだった。
「…もう帰んね?」
「…だな」
 珍しく意見の一致を見た二人は、すごすごと足早に去っていく。その間ももちろん贈り物は頂き、感謝の言葉を口にすることは忘れない。このアドバイスは帝から頂いたものだ。
 二人は知らない、こうなるであろうことを先に予想していた聖徳が、あえて体力のある二人を選んだことを。


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