ブラッククロス

氷の貴公子

闇の中…。空に浮かんだ月を求めてさ迷う。
それでも厚い雲に覆われ月は見えなかった。






さ迷う闇の中…。
白い大地か明るく闇を照らし道を指し示す。





孤独な玉座。






王家に生まれた二つの影。
相反する魔力、それは宿命か…。





綺麗な白い白い…。アラバスター…。
儚くも美しいその女性は命と引き換えに産み落とした。
氷の結晶を…。
溢れる愛を喰らうようにその結晶は女性の命を吸い込んで…。
暗い暗い…。夜道を歩く王家の血を受け継いだ。





もう一つ…。王家の血を受け継ぎ禍々しい魔力…。
サタンの炎は禁忌を犯した男を焼いて塵に消えた。
炎の中に女性が赤子を抱いて立っていた。
蒼い炎はいずれは女性の命を奪うだろう…。






彼女は抱いた赤子を見つめた。
赤子はゆっくり目を開ける。漆黒から…。真紅へ。あぁ…。この子なの…。





禁忌を犯した故に…。
蒼い炎に包まれる。
「出来ればあなたと一緒にいたかった…。」






その赤子は魔力を解放し続ける。底無しの魔力…。
炎に包まれる。
不思議と苦しくはない。
最後に何かを呟いた…。
赤子に届いたかどうかはわからない。
炎は凝縮し、最後に輝く。
蒼く蒼く…。美しい宝玉が転がった。






闇の世界の月は見えなかった。






夜道を照らし出してくれる光はなく。
闇より生まれし輝きは…。





闇を導くか…。それとも…。






ビックリジュエルは三つ生み出された。






闇は光を求めて…。
さ迷う。
何処に向かうかわからない。





定めというなら喰うか喰われるか…。
恐ろしくも美しい…。美しくも哀しい存在は…。





光を求めて…。
夜の道を行く。
目指すは月の光…。






氷の結晶。
炎の結晶。






闇の玉座と王冠をかけて…。






二つの影は我が道をゆく。
暗い暗い夜の道を行く。





雪明かり…。
月のない大地は白い大地となって仄かに明るく、道を指し示す。






たとえ月が無くとも…。
私は…。進む。
私は…。受け入れる。
氷の玉座と成り果てようと…。






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