ブラッククロス
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モノクロームの世界…。





紅い瞳のバンパイア…。
青い瞳の人間…。






見つめ合う二人は何処か寂しそう。





紅い瞳は悲しげで…。





青い瞳は優しく見ていた。




二人は愛し合ってるのが痛いくらいわかる。





私は…。





暗がりが濃くなる。





足が沈んで行く…。






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甘ったるい香りに目が覚める。





動こうとすると木が軋む音がする。





梁に両腕を吊り下げられていた…。






恐怖以外何もない。
ただ誰もいないのに包帯が動き回る。





こっちの世界に来ていろいろ見てきたが誰もいないのにものが動くのはやはり気味が悪い。





床に散乱する包帯にドレス…。





救いは…。小さな十字架は首からまだ下がっているようだった。
無ければパニックになっていただろう…。唯一の心の支え。




壷に入れては包帯がゆっくり巻かれていく…。





意識は朦朧としていた…。
甘ったるい蜜が体に浸される。
火の気もないのに気のせいか部屋は暑い。





「このままじゃ…。」





ミイラにされちゃう…。




「怖いよ…。ノア…。」





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店の奥…。中庭のドームの下で複雑な魔方陣が光を放ちながら形成されていく…。





「探し物には打ってつけか…。」





追跡術…。特殊な風が八方に散乱して飛んでいく…。





翡翠の瞳が何処か遠くを見つめ、瞳が濁る。
集中力は切らさない。
探りを入れる。





グラスは湖城に戻りノアを探していた。






何処にもいない。





紅い瞳のバンパイア…。




八つ裂きにしようと白い匂いを追っていた…。






黄緑に光る沼地にいた…。
桟橋に立ち気配を探る。




残り香のようだ…。
歯をむき出し、炎を灯して気配に振り返る。






「ノア様!」





霧が現れ執事はひれ伏しながら叫んでいた。






「マリー様が!私の失態でございます!どうか…。」





言い終わる前に…。
熱風が通り過ぎて消えた。





執事は驚きながらも苦笑した。本来ならここで直ぐに命はなかったはずなのだから…。





あの方を変えたのかもしれない…。
そして、私も…。





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