【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑

もうすぐ8時になろうとしたその時ホテルのドアが静かに開いた。

翡翠は起き上がるとドアの方に視線を向けた。
そこには翡翠が待っていた男が立っていた。

男の表情は無表情とも言えるくらい翡翠を見ても微笑みかける事も怒ることも罵倒することもなかった。

その空気が翡翠に重たくのしかかっていた。

 「部長聞かせてくれますよね?」

翡翠の言葉もまた男には重圧でしかなかった。

 「来春にでも昇進させるつもりだから頑張れと専務に肩を叩かれた後、耳元で身の回りを綺麗に整理するように言われた。」

 「何を言ってるんですか?」

 「つまり俺と翡翠の関係を専務が知っていたんだよ。それで俺は焦った。口約束とはいえ妻とは離婚するとお前には言っていたからな。 別れ話しなんて切り出した時には修羅場になるのが目に見えていた。ましては部下に手を出していたことが会社中に広まると俺の立場も出世も・・・だから俺はアイツを雇ったんだ。」

 「アイツって? 雇うって? 部長!!」

翡翠は男の腕にすがると声を荒立てた。


 「木崎琥珀、奴の裏の顔は別れさせ屋なんだよ」

 「何・・・言ってるんですか?」

 「俺に声をかけてきたのは奴の方だった。神崎グループ会長と夫人に付き添われ奴はうちの社長の所に挨拶に来ていた。その時たまたま俺と専務の話しを耳にして俺に近づいてきたんだ。 奴の目はギラギラと尖っているのに口元はやけに緩んでいてニヤリと笑うと俺の耳元で言ったんだよ。俺が別れさせてやりますよって」

 「そんな・・・そんなの嘘よ。」

 「嘘じゃない。お前も聞いただろ? 夫人が木崎が陰で何をしているかも把握しているつもりだと口にしたことを」

翡翠もその言葉にはひっかかってはいたが当時の琥珀のチャラさからするとそれは女遊びの事だと思っていた。

 「それは女癖の悪さの事で・・・」

 「だから、その女癖の悪さの原因が別れさせ屋なんだよ」

男の言葉は翡翠の心を限りなく黒に染めていく。

 
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