【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑

複雑な感情など日常生活には関係なく、翡翠は業務に追われていた。

余計な事を考える余裕などないほどに・・・

それなのに気が付けば視線の片隅に凛とした男の姿が映り込む。
意識しないように考えれば考えるほどざわめく心。

琥珀の脅迫にも似た約束が余計に翡翠に部長を意識させた。


 「宝城君ちょっと・・・」


視線をそらし、少しでも男から離れようとした時だった。


 「はい。」

部長に名前を呼ばれることが、部長室に呼びつけられることにこんなに緊張するとは想像していなかった。

仕事の件だと分かっていても、今の翡翠には状況など考える余裕もない。



 「呼びつけて悪かったね。 別れた男とは出来る事なら顔も会わせたくないだろう?」

男が苦笑する。


 「仕事ですから・・・」

 「仕事か・・・ その仕事中悪いんだが渡しておきたいものがあってね。」

男がポケットからキーケースを取り出すと翡翠の部屋の合鍵を外して翡翠に手渡した。

 「捨ててくれればよかったのに・・・」

 「鍵なんてそう簡単に捨てられるものじゃないさ。大切な女性の部屋の合鍵なら特に・・・」

 「部長・・・。」

鍵を握りしめながら翡翠はフゥっと笑って見せた。


 「俺の荷物は捨てていいから。 荷物ってほど物もないとは思うけど・・・」

男の大きな手が今にも泣き出しそうな翡翠の頭をポンポンと優しく叩く。


 「これからもよろしく頼むよ」


承諾された言葉が翡翠には確かに聞こえていた。
部下として・・・






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