ヴァイブ
「それでは、友人を代表して、平岡 七海さんからの言葉です。」

司会の人に言われて、拍手の中、私は用意されたマイクの前に立ち、琴子と翼を見た。

会場の中の人達も、琴子も翼も
いっせいに視線が私に注がれる。

だからと言って、緊張はなかった。

フーと心の中で、深呼吸をしてから

私はゆっくりと口を開いた。


「私は…

琴子を妻にする、翼が嫌い。」

会場中がざわついた。
だけど、私は続ける。

「それほど、私は琴子を大事に思ってるから、

幸せにしてやれよ。翼。

結婚、おめでとう。」

そう言うと、翼が

「大丈夫。絶対に幸せにするから。」

私に言う。

それに続いて琴子も

「ありがとう。七海。」

目に涙が溜まっていた。


会場からは、大きな拍手。



つたなすぎる言葉だけど

琴子ならわかってくれたと思う。

私の精一杯のはなむけの言葉。


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