ヴァイブ
…面白くない…

「帰る。」

財布から、五千円札を出して
カウンターに置いて立つ。

「七海!」

玲二の呼ぶ声も無視して店を出た。


アレぐらいで泣くなんて、バカじゃん。

イラ立つ気持ちを消せないまま

家に帰って玲二の部屋の
玲二のベッドの中へと潜り込んだ。


電気もつけないで、目を開けたまま一点を見る。

コチコチと時計の音だけ聞こえる。



この苛立ちが何なのか…

わかってはいるけど、あえてわからないフリする。



…私は、あの女を妬ましく思った。


私には、ない。

あんな純情。


羨ましがるわけじゃない。

欲しくはないけど…

同じ年数を生きた女(ヒト)だけど

辿るのは、全く別の人生。


中身が違うのも当たり前。


あの女が、純情ぶれば純情ぶる程…

きっと、表しか知らないで過ごして来たんだ。

…そう思った。


だから、死ぬ程、傷つけばいいんだ。



………………………最低な私。



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