キミがいなくなるその日まで



その後、シンの病室に看護師が入って来て診察の時間を知らせに来た。

私も一緒に廊下に出るとシンは『マイ、またあとでね』と言って診察室に向かって行った。


その言葉の意味ならなんとなく分かる。

だって私には“今日も屋上に来て”って聞こえたから。


何故か自分の病室に帰る足取りが軽い。

誰かと“約束”する事がこんなに嬉しいなんて知らなかった。


病室に戻るとお母さんが落ち着かない様子でウロウロしていた。私の顔を見た瞬間、慌てて駆け寄ってきた。


『マイ、どこ行ってたの?』


そんなお母さんとは逆に私は冷静にベッドに入る。


『ただの散歩だよ。そんなに慌てる事じゃないでしょ』


『……そうよね。ほら、普段マイは出歩かないから心配になっちゃって』


お母さんの言ってる事は正しい。私が30分以上病室を離れるなんて今までなかったし。

私は出歩いた理由をお母さんに説明する事はなかった。

もう小さい子供じゃないしシンの事まで話す必要はないと思ったから。


お母さんはその後、花瓶の水を替えてくると言って病室から出ていった。


一人になった私は引き出しから携帯電話を取り出してみた。


3ヶ月前に新しい機種にしたばかりなのに、ここ1ヶ月はあまり触れる機会がなかった。

病院では使用禁止だけど、私はたまにこうして何か連絡が来ていないか確認している。

電源を入れてセンター問い合わせをすると、新着メッセージが一件届いていた。


それは仲の良かった高校の友達からだった。



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