崩壊家族
久しぶりに我が家に帰ると、誰もいなかった。

「…さゆり?」

見回しても、誰もいない。

パートにでも、出かけているのだろう。

俺は妻の帰りを待った。


けど、夜遅くになっても帰ってこない。

ああ、そうか。

今さらになって、わかった。

妻の、寂しい気持ちが。

帰ってこない俺と娘に、妻はこんな気持ちを抱いていた。

1人で寂しかっただろうに。

1人でつらかっただろうに。

1人で、苦しかっただろうに。

今さらになって、やっとわかった。
< 102 / 105 >

この作品をシェア

pagetop