阿鼻叫喚
男は綱渡りをしていた。

少年が近付いてきて尋ねた。

「何をしているの?」

男は答えた。

「綱渡りさ」

少年は不信そうに、更に尋ねた。

「地面の上で?綱も無いのに?」

男はニヤリと笑った。

「俺は気付いたんだよ。皆が気付いてないだけさ」

男は少しよろけたが、すぐに体制を立て直した。

「人生ってものに。誰もが例外なく危うさや曖昧さを抱えた綱渡りだって事にさ」

男は足を止める事なく付け加えた。

「そして俺はこれからもずっと、綱渡りを続けていくのさ」

少年は嬉しそうな顔で、男の背中を見送った。

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