龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】
わたしが髪を乗せると、圭吾さんは和紙を折り畳んでポケットに入れた。


「それ、何するの?」


「お守りだよ」

圭吾さんはそう言うと、身を屈めてわたしの頬にキスをした。

「すぐに帰って来るから待ってて」


わたしは黙ってうなずいた。


圭吾さんはわたしの髪を一撫でして、悟くん達の方を向いた。


「僕の支度も終わったよ。行こう」


圭吾さんは和室の奥隅まで行くと、カーテンを開けるような仕種をした。

壁が歪んだように曲がって見え、そこからみんなは出ていってしまった。


わたしはしばらく立ち尽くしていたけれど、ゆっくりと手にしたハサミを座卓の上に置いて正座した。

どのくらいたってからか、襖の向こうから和子さんの声がわたしの名を呼んだ。


「なぁに?」


襖が少しだけ開いた。


「皆様お出かけになられましたか?」

「ええ。あ……和子さん?」

「はい?」

「このハサミをしまってもらえる?」

< 77 / 120 >

この作品をシェア

pagetop