潮騒
アフターを終えての帰り道で偶然に会ったのは、チェンさんだった。


それにしても久しぶりだと思い、ついつい立ち止まっていると、



「ねぇ、ご飯でも行こうか。」


彼はいつもの調子でそう言った。


あたしはこれといって断る理由もなく、チェンさんに続く形で近くにある２４時間営業のコーヒーショップへと入る。


相変わらず、時間帯も考えず、テーブルにはたくさんのホットドッグやサンドイッチが並べられているけれど。



「元気してた？」


なんて、彼はブラックのコーヒーをすすりながら、



「ところでさ、マサキが物憂げにしてる理由知らないかな？」


きっとそれが本題だったのだろう。


あたしが曖昧な顔しか出来ずにいると、チェンさんはオッドアイの瞳を緩め、



「まぁ、恋愛なんて簡単じゃないしね。」


今日は妙に物分かりの良い台詞を吐く。


まるで自己完結みたいなことを言いながら、彼は相変わらず自分のペースを保っていた。


あたしは頬杖をついて、カップにたっぷりの砂糖を混ぜる。



「そういうチェンさんこそ、どうなんですか？」


「何が？」


「恋愛、上手く行ってるのかなぁって。」


こういう場合は、聞き役に徹する方が楽で良い。


あぁ、という顔をした彼は、



「俺だってそれなりに悩みくらいはあるんだよ。」

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