潮騒
そんな恐ろしい目をして言わないでよ。


まるで復讐でも誓ったみたいに、マサキの瞳には、濁った色が揺れていた。



「何があってもお互いのことだけは裏切らねぇって誓ったのに!」


「………」


「俺らはそうやって、ずっと互いを支えに生きてきたはずだったのに!」


吐き出すように言った彼の言葉が、ただ痛かった。


きっとそれは、あたしとレンのようなものなのだろう。



「なのに、アイツは…」


そこまで言い、マサキは唇を噛み締めた。


が、次に顔を上げた彼は、まるで意を固めたみたいに立ち上がる。



「ちょっと行ってくるわ。」


気付けば、あたしは制するようにその腕を掴んでいた。



「待ってよ!
あたしこんなの嫌だよ!」


「………」


「ちゃんと鏡見てよ!
殺し合いでもするような顔で、どこ行くつもりなのよ!」


けれど、それでもマサキが表情を変えることはない。


掴んでいた腕さえも、ほどかれる。



「心配すんな。」


たった一言だった。


それだけの言葉を残し、彼は部屋を後にする。


あたしはその場に膝から崩れ落ち、悔しさと悲しみに打ち震えた。

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