潮騒
どうしてあたしは今、笑っているのだろう。


心にぽっかりと開いてしまった穴をどうにかして埋めたくて、よく知りもしないお笑い番組の話を持ち出した。


身振り手振りで話すあたしに、だけども美雪は何も言わないままだ。


それから小一時間が経過した頃、



「いやぁ、マジで腹減ったー。」


レンがやってきたことに、あたしは驚くままに目を丸くしてしまう。


きっとさっき、あたしがトイレに行った隙に、美雪が連絡でもして呼んだのだろうけど。


ありがた迷惑なことをしてくれたものだと思う。



「あ、ルカもいたなんてすげぇ偶然だよな!」


わざとらしいことを言いながら、彼は美雪の横へと腰を下ろした。


またお説教をされるのではないか、心配させたくなんてない、と、途端に気まずくなってあたしは、顔を俯かせることしか出来ない。


腹が減った、と言ったくせに、何故だか突然、思いついたようにレンは、



「なぁ、これからみんなでどっか行くか。」


「どっかって、どこ?」


美雪はさして驚くでもなく彼に問う。



「カラオケとかクラブって気分じゃねぇし、夜の海とかアリじゃね?」


「何それ、真っ暗なだけじゃん。」


「わかってねぇなぁ、それが良いんだろ?」


盛り上がるのなら、ふたりだけでやってほしいのに。


「ルカはどう思う?」なんて話を振られ、あたしはため息混じりに肩をすくめた。

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