潮騒
それからどれくらいが経っただろう、気を抜けば緊張の糸が途切れてしまいそうだった、その時。


パタパタと足音が響き、はっとした。


姿を現した美雪は、



「お兄ちゃんが目を覚ましたんです!」


早口に言って、レンの腕を引っ張った。



「…え?」


「だから、お兄ちゃんが意識を取り戻したんだってば!」


早く!


と、急かすように彼女が言い、あたし達は半ば強引に病棟内へと連れて行かれる。


美雪が早口に話す内容を要約すると、つまりは容体が急変した宮城くんは、まるで神様が奇跡を起こしたみたいに、突然に目を覚ましたそうだ。


が、あたし達はまだ半信半疑で、状況の理解さえもままならない。


エレベーターのドアが開き、宮城くんのいる階へと辿り着いた瞬間、



「美雪!」


そこに立ち塞いだのは、



「…お母、さん…」


美雪の、宮城くんの、お母さん。


彼女はすさまじい形相で唇を噛み締め、あたし達を制するようにして、



「その子、真下くんよね?」


「………」


「どうしてあなたが、そんな子をここに連れてくるの?」


「………」


「何で一緒にいるのかって聞いてるのよ!」

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