潮騒
その怒りも疑問も、きっと当然のことだろう。


彼女から見れば、レンは可愛い息子をこんな風にしてしまった、憎むべき対象なのだから。



「祐樹は少し前に意識を取り戻して、まだ混乱してるの!」


「………」


「なのにそんな子がいきなり目の前に現れたらどうなるか、あなたにだってわかるでしょ!」


美雪を叱咤したお母さんは、



「少しでも息子のことを考えてくれるなら、一秒でも早くこの場から立ち去ってちょうだい!」


レンに向かってそう言い放つ。


あたし達の足は、完全にそこで止まってしまった。


美雪はたじろぐように顔を俯かせ、



「…だって、そんなことっ…」


呟くように、唇を噛み締める。


確かに、宮城くんの意識が戻ったとわかれば、あたし達はもうここにいるべきではない。


けど、でも、レンの気持ちはどうなるんだ。



「お願いします、宮城くんに会わせてください!」


「………」


「話をさせてなんて言わないから、せめてレンと…」


と、あたしが言い掛けた時だった。



「お母さんは何にもわかってないよ!」


美雪は遮るように声を張り上げた。

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