潮騒

目覚めた朝

マサキが戻ってきたのは、あれから一日半が過ぎてからだった。


いや、もっと正確に言えば、知らない男の人に抱えられて運ばれてきた彼は、殴られたような姿でぐったりとしていた。


何があったのかなんて、聞くだけ悲しくなるから止めておいた。


あたしがマサキの傍に付きっきりでいる間にも、時間は流れ、情勢は刻一刻と変わっている。


テレビとレンからの情報によると、地元の空気は恐ろしいほどにピリピリとしていて、今にも抗争が起こりそうなほどらしい。


石橋組の事務所を狙ったのは、対立していた堀内という組だという。


けれどあたしには全然わからない話で、石橋組長が殺されたという事実以外は、何が何だろうとどうでも良かった。


気付けばあれから2日が過ぎていた。


マサキの看病に疲れ、お店のある一階へと降りると、そこではヨウさんと、もうひとりの男の人が、テレビを観ながら怖い顔で話し込んでいる。



「まさか堀内が石橋なんかを相手にドンパチしやがるとはな。」


「そうっすね。」


「まぁ、今はもう堀内に昔ほどの力があるとは思えねぇけど、どっちが潰されちまうのかねぇ。」


「どっちにしても、あの街が6年前みてぇに混乱することは間違いっすよ。」


「…嫌な話だな。」


「そしたらタカさん、どうするんすか?」


聞いたような名前だったが、正直今はどうでも良かった。


疲弊した思考で立ち聞きしていたあたしは、ヨウさんが敬語を使えるなんて思わなかった、と、全然関係ないことを考えていた。


好きに使えば良いと言われていたので、勝手に冷蔵庫を開け、麦茶を取り出していると、



「そういやアンタ、マサキの女なんだって?」


話し掛けてきたのは、ヨウさんの隣にいる男――マサキを連れ戻してくれた、タカさんと呼ばれる人だった。

< 379 / 409 >

この作品をシェア

pagetop