潮騒
レンと一緒に来る月に一度のお墓参りももう恒例となっていて、どんなに忙しくとも、この日だけは予定を空けている。


そして墓前に参った後で、ふたりで近況報告をするのもまた、恒例だった。



「まさか氷室正輝が自首するなんて思わなかったけど。」


レンはそう言って肩をすくめ、



「まぁ、実刑になることは確実だろうなぁ。」


そんなことは覚悟の上だ。


つい先日、マサキは起訴され、今は初公判の日を待つばかりらしい。


すべてを自分ひとりで背負い、罪を償うと決めた彼。


車へと向かう足を止めたレンはこちらを振り向き、



「辛くねぇのか?」


「平気だよ、約束したからさ。」


「そっか。」


それ以上は聞かれなかった。


苦笑いを浮かべたレンはきっと、自分自身をあたしと重ねているのだろう。



「レンの方こそ、辛いんでしょ?」


「わかりきったこと聞くなっつの。」


「美雪、もういないもんね。」


そう、美雪はこの街を出た。


宮城くんに合った、有名なリハビリ施設が他県にあり、家族でそこに移り住むと決めたらしいから。


別れは2週間ほど前だった。

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