人魚姫は籠の中で。





「あ、あの…あなた…は?」



彼のねちっこい視線に耐えられなかった私は、胃を決して喋りかける。




「…ヴィアン」


「……え?」



あまりにも小さな声で、一人言を呟くように言うから。


聞き取れなくて、聞き返す私に彼はもう一度、



「ヴィアン・ファンスフォード」



綺麗な声でそう告げた。




“ヴィアン・ファンスフォード”


その名をしらない者はきっと魔界にはいない。



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