人魚姫は籠の中で。
狼さんは、男の首筋に噛みついていた。
相手は苦しそうな表情を浮かべ、何とか振り払う。
「…はっ…そうだよねぇ。あの方が君一人にするわけないか。ふーん。君、大切にされてるんだねぇ」
「…?」
「そろそろ、来る頃かな?あー残念だけど、こっちも負傷してしまったし今日はもう立ち去るとするかねぇ」
そう言い男がニヒルに笑った瞬間、強い風が起こり私を襲う。
強い風に目をつむり、開いた時には…もう男の姿はなかった。
よかった…あの男に、血を奪われなくて。