人魚姫は籠の中で。



狼さんは、男の首筋に噛みついていた。


相手は苦しそうな表情を浮かべ、何とか振り払う。



「…はっ…そうだよねぇ。あの方が君一人にするわけないか。ふーん。君、大切にされてるんだねぇ」



「…?」



「そろそろ、来る頃かな?あー残念だけど、こっちも負傷してしまったし今日はもう立ち去るとするかねぇ」



そう言い男がニヒルに笑った瞬間、強い風が起こり私を襲う。



強い風に目をつむり、開いた時には…もう男の姿はなかった。



よかった…あの男に、血を奪われなくて。


< 54 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop