人魚姫は籠の中で。

「…ああ。もう我慢できない」



そう耳許で囁いた男の言葉に、ああ、もうダメだと思った。


次に来るであろう、私の首筋に埋められる牙の痛みに身構えギュッと目を堅く瞑った。




「…ぅっ」




痛みがこないことを不思議に思った瞬間、相手から呻き声が聞こえた。



「……え?あなたは、」



私が恐る恐る目を開くと、私の視界は黒で埋められていた。


このフサフサの毛並みは、あの狼さん?



< 53 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop