愛して。Ⅱ ~不良俺様ボーイズ×絶世美少女~【完】
「客の一人とそういう関係になって颯ができたわ」
遠い昔を思い出すように、陽子さんは遠くを見つめている。
「その人と結婚して、風俗からも足を洗った。颯も無事に生まれて、幸せだった。だけど……」
陽子さんは悲しそうに下を向く。
「颯が1歳になる前に、離婚したの。残ったのは小さな颯と元夫が残した多額の借金だったわ。借金を返すためにまた風俗に戻ったの。だけど借金を返しながら小さな颯を育てるなんて無理な話だった」
肩を震わせて、目頭を手で押さえている。
泣いているのか?
「このままじゃ颯を……幸せに、できないと思って……っ」
ぐすっと、鼻をすする音がする。
「手放したの。颯に少しでも幸せになってほしくて……」
それは確かに賢明な判断だ。
確かに俺は今幸せだからね。父さんと母さんに出会えた。
「そうですか」
――トントン。
俺がそう言った時、タイミング良く戸が叩かれた。
「佐々木様、失礼いたします」