君に落ちた奇跡
「…お前…」

「ひかる!」

俺が紡ごうとした言葉の上に、第3者の声がかぶる。

近寄って来たのは若めの真面目そうな青年。

「ひかる、何処に行っていたのですか!探しましたよ!」

俺の手を引き離し、彼女の身体を抱きしめる。

「すみませんでした…迷子になってしまって…」

「私も貴女から目をはなしてしまいましたから同罪です……で、こちらの方は?」

いかにも、過保護な青年は俺を睨むように見てくる。

「彼は私を助けてくれたんです」

彼女の必死な目で青年も納得したらしい。

「大変ご迷惑をおかけしました。もう、大丈夫ですので…」

あくまで汚いものを見るという態度を崩さない青年に、俺は苛立った。

「いいえ。
別に迷惑なんてかけられていませんよ、彼女には…」

冷静に落ちついて一定のリズムで言葉を紡ぐ。

「ただ、過保護な貴方には大変迷惑だ。
貴方のせいで彼女は身を守るモノを何も持てていない…
人として…未熟過ぎる」

彼女の為に?

いや、俺の勝手か…

言う必要のないモノを口に出してしまう。

それが、青年には気に食わなかったらしい。

「いらない世話ですね…もう、関わりの無い方には……彼女を守っていただきありがとうございました。
ひかる、行きますよ」

彼女の手を引き離れて行く。

なんだか彼女は俺の顔を哀しそうに見つめていた…。

でも、俺には何も出来ない…

してやれない…

彼女の手の感覚の残る手を強く握る。

気付いてしまった…

いつの間にか…



俺は



彼女を………
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