夢幻の都

まったく、どこで間違えたのか。


ランダーは舌打ちしながら、足元の湿った土を爪先で掘り返した。

街道の石畳とはほど遠い、森林特有の腐葉土だ。あたりを見回しても、乳白色の濃い霧に阻まれて、視界はゼロと言ってもいい。

しかも霧は晴れるどころか、ますます濃くなってきている。

二頭の馬が不安げに、首を振りながら胴ぶるいした。馬たちの横には、この大陸の先住民族であるベルーの少女、ソニアが手持ち無沙汰に手綱を持って立っている。


「ねえ、あたし達、道に迷ったの?」

ソニアは、無邪気な明るい声で尋ねた。

ランダーは、炎のような赤い髪をいらだたしげにかきあげると、肯定とも否定ともとれない唸り声をあげた。


「ランダー」

ソニアは、辛抱強く尋ねた。

「あたしは、道に迷ったのかと聞いているのよ」


「ああ」

ランダーは、不機嫌そうに答えた。

「霧が晴れるまで、少しじっとしていた方がいいかもしれない」

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