愛花
その日から圭織は両親を避けるようになった。

学校に行っても画伯はいない。

絵を描く気にもならない。

ボーッと過ごす事が多くなった。

゛私は産まれてこなければよかったのかもしれない。お父さんもお母さんも違う幸せを見つけていたかもしれないし…″

一人で思い巡らすことは暗くなることばかりで悪いほうに考えてしまう。

圭織は家に帰るのも億劫になり、夜の街に徘徊するようになった。

それなりに話す友達も出来、身なりは派手になってきた。

父母は圭織を諭そうとしたが話す間が無い。

そのうち圭織たちのグループが他のグループと争いを起こし警察に補導されることになり、学校も停学になってしまった。

゛圭織、何故自分を大事にしない。おまえを産んだ人に申し訳ない。私を母と見たくないんだったらそれでもいいけど…本当のお母さんに謝りなさい。″

母は叱ってくれた。

圭織は情けなかった。

逃げてばかりの自分が情けなかった。

でも素直になれなかった。

ふてくされた顔で黙っていた。

いつも優しい父が殴った。

圭織は驚いて父の顔を見た。

泣いていた。

゛おまえのお母さんは今のお母さんだけだ。おまえを産んだ人はおまえと僕を残して逝ってしまった人だ。僕を支え圭織を育ててくれたのはお母さんだ。自分自身辛かっただろうに何も言わずについてきてくれたのだから。″

圭織は泣いた。

すべて涙が洗い流してくれたはずだった。

すべてがうまくまとまったと思っていた。
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