愛花
゛こちら警察病院の小児病棟ですが、妖子さん…真中圭織さんの娘さんなんですが…″

゛えっ…真中圭織は娘ですが妖子って…圭織はそちらにおりますでしょうか…すぐに行きますんで″

母は父に連絡し、父は大急ぎで病院に行った。

そこには乳飲み子を抱えてソファーに座っている圭織がいた。

゛圭織…″

髪はボサボサ、着ているものも薄汚れて、足は素足のまま呆然としていた。

゛何があったんだ。この子はいったい何があったんだ。″

゛真中さんでいらっしゃいますか。私、この地域の交番勤務の警官で田中といいます。″

゛圭織の父です。これはいったい…″

田中巡査は話し始めた。

圭織と和哉は安いアパートの一室で暮らしはじめ、幸せそうな新婚さんって感じだった。

和哉は平日は近所の運送屋の倉庫で働き、土日は近くの公園で似顔絵を描いて収入を得ていた。

圭織のお腹が目立ってきた頃見るからに怪しい男たちに公園で囲まれているのを助けてから圭織と和哉と知り合った。

和哉の奥さんが雇った探偵たちだった。

そして圭織が出産し妖子が産まれた。

それからの嫌がらせはひどいものだった。

ドアに貼り紙がされ、そこには圭織を中傷する言葉が書かれ和哉の職場にもなにかしらの嫌がらせや中傷するチラシが配られたりして仕事をやめることになり、生活していけないくらいになり、和哉が奥さんに話をするために帰っていったがそのまま戻ってこない。

圭織は思い余って子供と心中しようと川に入っていくところを助けられたのだという。

田中巡査はもしかして捜索願いが出ていないか検索してみたところ真中圭織の名前を見つけて連絡したという。

゛圭織、帰ろう。その子も一緒に帰ろう。″

圭織は何も言えずにただ泣いていた。

父は田中巡査に丁寧に礼を言って圭織を連れて帰った。
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