愛花
私はシスターテレサの小さな製作部屋で絵の勉強を始めた。

゛最初は何を描きたい?″

゛………″

わからなかった。

シスターテレサは優しく微笑んで、

゛じゃあ…窓から見える物を描いてください。″

シスターの小部屋からは学校の木々や花壇が見える窓と運動場の見える窓があった。

私は花壇を描くことにした。

ちょうど色とりどりのパンジーが咲いていた。

画用紙に鉛筆で描き始めると

゛色鉛筆で描きましょう″

シスターは何色もいっぱい入った缶を持って来た。

゛ハイッ″

うれしくていろんな色を使って描いた。

祖父はなかなか出てこない私をシスターの小部屋まで迎えに来てくれた。

゛真中さん、おじいさまがお迎えに来られましたよ″

゛いつもお世話になっております。あーや、帰ろうか″

゛おじいちゃま…遅くなってごめんなさい。帰ります。シスター、ごきげんよう。″

゛ごきげんよう。また明日ね″

帰る支度をして祖父の手をつないで帰ろうとすると

゛あーやの絵?優しい絵だね。″

゛まだ描きかけだから見ちゃダメ。出来たら見てね。″

゛そうだね。シスター、さようなら″

゛さようなら″

祖父に誉められてうれしかった。

もっと絵を描きたかった。

もっと絵が好きになった。
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