愛花
゛仲矢さんに聞いたよ。あーやはもう立派なイラストレーターだって。

いい人だね。頼れる人だよ。

ただ、やさしすぎるところはあるけどね。″

祖母はそう言って私の手に通帳と印鑑を渡した。

゛これはおじいさんがおまえの名前でずっと積立ていたものでこれからさき何があるかわからないからね。

私が元気だったら渡さないけどね。

おまえだったら私たちの気持ちをわかってくれると思って渡すんだよ。

人のためじゃなく自分のために使うんだよ。

自分の稼いだお金は好きに使えばいいよ。

そして私がこれから入る病院は来ないでおくれ。

厳しい言い方になるけど私が死んでもおまえには知らせない。

ただおまえが、あーやが死にたくなったとき訪ねておいで。″

私は言葉がなかった。

最後に祖母の絵を描きたかった。

引っ越しは慌ただしく行われた。

そして別れの日私は祖母に絵を渡した。

祖母は私を抱き締めてくれた。

その時初めて祖母の衰えに気が付いた。

そしてその愛の深さを知った。

゛おばあちゃん…大好き……″

そういうのが精一杯だった。
< 41 / 70 >

この作品をシェア

pagetop