愛花
受験の時期になった。

しばらくは彼と会うことはないだろう。

私は寂しい気持ちをキャンバスにぶつけるように描いた。

キャンバスの中では彼は笑っている。

芝生の上で子供たちに囲まれて笑顔の彼がいる。

描きながら涙が止まらない。

一言でいい。

彼の声が聞きたい。

…愛しています…

キャンバスの中の彼に向かってつぶやく。

返事など返ってくるはずないのに…

後ろから声がする。

‘僕も愛してる…’

えっ

振り返って驚いた。

そこに彼がいる。

なぜそこにいるのかなんてどうでもよかった。

抱きついてキスをした。

そのまま愛を確かめあった。

何も考えず、ただ本能のままに…恥じらうことすらせずに抱き合っていた。





新しい愛の始まりだった。
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