それでも、まだ。



『…やっぱりセシアは君達が?…もしかしてこの村も?』



レンが畳み掛けるように聞くと、リーヤは怖じけづかずに、飄々と答えた。



『…だとしたら?』



『……殺しちゃうかもね。』




セシアは黙って成り行きを見守っていた。



――リーヤという男は自分とどんな関わりがあったのだろうか。



少なくとも、自分が記憶喪失になったことと関係があるのは確かである。



そして、黒組織とは何なのか。…先程蘇った記憶は何だったのか。


分からないことだらけである。
…でも、何故だか頭が回らない。

なんだかとてもフラフラして――…




『…おい!セシア、しっかりしろ!』



シキの叫び声が遠くに聞こえ、セシアはシキにもたれかかるようにして気を失った。




『おいセシア!…血を流し過ぎたんや…!』



シキがセシアをしっかり支えながら言うと、様子を見ていたリーヤがククッと笑った。



『…早く手当てしてやった方がいいぜぃ?傷は深いはずだしな。…それに、組織に戻らざるを得ないと思うぜ?』



『…どういう意味?』



レンが眉を潜めたとき、不意にポケットに入れていた無線が鳴った。


レンが刀を突き付けたまま無線を取ると、幹部ではない、切羽詰まった声が聞こえてきた。




『――報告します!組織が襲撃されました!』



『…え?どういうこと?ジルやマダムは?』



レンが困惑を隠さずに聞き返すと、無線の部下の声も困ったように続けた。



『それが2人共何処にも…!そしてボスが負傷してしまい……!』


『ベルガさんが…!?』



レンは驚いた声を上げた。チラリとシキを見ると、シキも目を見開いている。



『…フン、じゃあな。今度会ったときは手加減しないぜ?』



ふらりとリーヤはレンから離れ、闇の中へ紛れていった。



『…っ!ちょっと…!』
『…レン!そいつはもう後や!今はやるべきことがあるやろ!』



咄嗟に追いかけて行こうとしたレンだったが、シキに制され、ぐっと堪えると、ふぅと息を吐き、無線に向き直った。




『…分かった。すぐに戻るよ。それまで足止め出来る?』



『はい!了解しました!』



レンは無線を切ると、刀を納め、シキの方を見た。


シキは既にセシアを背負っている。



『…帰ろう。状況がイマイチよく分からないけどね…。』



『…せやな。他の幹部も、真理も……セシアも心配やしな。』



そして2人は足早に村を後にした。



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