それでも、まだ。



『ここは……?』



神田とシーホークが部屋を後にしてしばらく歩くと、巨大な頑丈そうな鉄製の扉の前にたどり着いた。その扉の横でシーホークが軽快にパスワードを打っていくと、ゆっくりと扉は開いていった。



そして開いた扉の先には、大きなモニターが何個もあり、広い部屋を覆い尽くしていた。



『ここは、人間界の様子をいろいろな場所で観ることが出来る部屋です。…人間界にはそう簡単には行けないんで、特別に、でね。』



シーホークの説明を聞きながら神田が部屋の奥へと進んでいき、様々な画面を見てみると、確かに日本だけでなく、世界中の様々な場所が画面に映っていた。光がある世界を久しぶりに見た気がして、神田は懐かしい気持ちになった。




『……帰りたくなりましたか?』



心配そうに尋ねるシーホークに、神田は目を瞑ってふるふると頭を振った。




『…いえ。まだ帰りたくないです。私は知りたいんです。』




その揺るぎない決意に、シーホークは肩をすくめた。




『ふふ。頼もしいですね。…えっと、動きがあったのは世界政府か…。』




その言葉に神田はばっと座って作業し始めたシーホークの元に駆け寄った。



そしてその真正面の画面を見てみると、立派な建物の中に黒いスーツを着た人たちがたくさんいるのが見えた。よく見ると、奥からより偉そうな小太りの人が出てきてどこかに向かっているのが分かった。周りにはSPのような人が10人くらいはいる。




『この人が動き出しましたか…』



シーホークは笑みを深めて呟いた。神田にはその笑みは少し不気味に思えて、少しだけ鳥肌がたった。




『そういえば、どうやって人間界に行くんですか?この世界と、人間界は繋がっていないはずじゃ……』



神田が胸に少し浮かんだ恐怖を押し殺しながら聞くと、シーホークはああ、と元の表情に戻りながら答えた。




『この世界と、人間界は、1年に一度だけ、繋がる日があるんですよ。』




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