時を止めるキスを
確かに、可愛さや華やかさに欠けてきたかもしれない。エッチだって、そんなにテクニックがあるとはいえない。だけど、私なりにタカシを大事に思ってたし、愛してたから一緒にいたのに。
こんな幕切れなんてひどすぎる。……彼と過ごして来た1年半という時間すら、今となっては何だったのかも分からない。貴重な二十代後半を、直接謝罪も出来ないような男と過ごしていたのだから。
早く終わらせて、たとえ少しでも帰ってベッドで眠りたい。それだけを思ってこれまで必死に文章と格闘してきたのに。
デスクの片隅で山と化したドイツ語で綴られた資料たちさえ、今日の私がひどくついていないことを象徴する存在に見えてくるから重症だ。
「ばかぁあー……」
とうとう我慢出来なくなり、スマホを握りしめたままデスクに突っ伏した私。止め処なく溢れる涙とともに、失恋の痛みを洗い流せたらどんなに楽だろうか。