時を止めるキスを


平日の穏やかな昼下がり。オフィス街にある全国チェーン展開のカフェは今日も賑わいを見せていたが、向かいに座っている人物は今にもそれを打ち壊しそうだ。


「はぁあ何ソレ!?タカシのやつ、マジでふざけんなっ!
あの顔面レベルで二股とか何様のつもり!?藍凪と付き合えただけ感謝しろっての!あー、うぜええええ!」

「ええと、ありがと円佳(まどか)。でも、ちょっとだけ落ち着いて?ね?」


仮にも私が付き合っていた男なのだが、彼女に遠慮というものはない。確かに、顔面レベルは中の中といったところだったけども。


とはいえ、予想通りに一気に沸点に到達してしまった彼女を前に、周囲に遠慮がちにまずは落ち着こうと宥めるばかりだ。


点と線を繋いでいくと、明らかに浮気を匂わせていた彼氏がいたのも過去のこと。


先日ひとりで残業中、一方的な電話を貰ってものの三十秒でフラレたのだから。


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