時を止めるキスを
タカシの部屋で感じた香りや除け者にされていた時のことを思うと、やっぱり私には無理だ。
きっと私より若い子だから、こちらに敵意むき出しで香りを残していたのかもしれない。
それにグラビア好きなタカシのことだから、魅力的な身体を前にノック・アウトしたとも考えられる。こんな推理ばかりしている私より、はるかに可愛らしい子だったのだろう。
この痛みが怒りに変わってくれるのなら、彼がもういない喪失感も一緒に消えてくれそうなのに。——失恋の悲しみが癒えるには、まだ時間が必要らしい。
それに電話を掛け直せなかったのは、望みゼロの状況に割り込む余地がなかったから。なんて言えば、ただ体の良いオトナの言い訳に感じるけど。
本当のところは、負け試合を挑んでみっともない部分をさらす勇気や気力がなかった。
もう面倒なことに巻き込まれたくなかったのだ。こんな性格が災いして、タカシとの間にも自然と溝が生まれていたのだろう。