時を止めるキスを


「ん?アラサー女に指輪贈るってことは多少なりとも結婚する気はあったんでしょ?
中途半端に弄んだり、生半可なことするな!ってソイツの会社の同僚に告げ口しとく。で、その結果、ヤツの悪評が立っても仕方ないんじゃない?——下半身の欲に負けて女心を弄ぶようなヤツに、コッチが温情かける必要なんかないし」

感情直下型でありながら、打算的で狡猾的なところは頭の回る円佳らしい。ただ、美人な彼女のファンがこの話を聞いていたら、多分全力で逃げ出しそうだけど。



「そうだね……。でもね、タカシの変化が分かってたのにずっと知らん振りしてたんだ。
きっと心のどこかで、本命は自分だから大丈夫って驕りがあったのかも……。いま思い返すと、慣れを言い訳にしてタカシのことを大切に出来なくなってた。
それに付き合ってた時間の長さに感(かま)けてオシャレもしなくなってたし、彼が出してた色んなサインも見逃すようになってて……。
これは憶測だけど。…タカシも初めはきっと、二股に対して罪悪感があったと思うんだ。それこそ、部屋の匂いとか食材や洗面用具が増えてたら、私も気づいて浮気を止めてくれるはずだって。
でも私、……それを何ひとつ咎めなかった。いずれ私のところに戻ってくるって、ずっと現実を直視しなかったの。
タカシがしたことはね、やっぱり許せない。けど、私が反省する点もたくさんあるから、……なんか仕方ないなって思う」

「藍凪……」


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