時を止めるキスを


改めて振り返ると、タカシをひとすじに愛していたのは紛れもない事実。だから、彼を嫌いになったかと尋ねられても答えに詰まってしまう。


つい2日前まで1年半も付き合っていたのだから、やっぱり簡単には嫌いになれない。


それこそ結婚しようと言われていたら、間違いなくYESを告げていた相手。――今となってはもう、虚しい仮想に成り下がってしまったけどね……。



「じゃあ、暗い話はここまで。ほらっ!円佳の方こそ、例の年下くんと進展あった?」

「まあねぇ。藍凪、年下って手もアリよ?そうだ、この前行った店のバーテンくんは?」

「……いや、絶対ナイって」

「えー、恋愛に”絶対”ってないのになぁ」


さすがにズルいとは思ったけど。こうして円佳の近況に話題を変えてしまったのは、今は話すべきじゃないという判断からだった。


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