時を止めるキスを
鋭くも扇情的な視線を受け止める余裕なんてない私は、うっすら目を開けつつも彼から顔を背けていた。
この温度と強引さは卑怯だ……。いくら逃げようとしても、呆気なくズルズルと、あれが真夜中の夢だと否定させてくれないのだから。
「——今夜は俺の家」
「っ、」
「聞こえた?」
敢えて答えを促してくるドラゴンに軽蔑の視線を送りかけたが、ハッと我に返ってそれは押し止めた。——私も彼と同類ではないかと。
嫌だ、とこの場で振り切って断ることも可能なはず。それなのに私は、まるで首振り人形のように“うん”と頷いてしまった。
この男が欲しいのは、手近の後腐れもないオンナ。なぜ私は、上司とリスクあるセフレ関係を築こうとしているのだろう……。