時を止めるキスを


自分の狭量さを知ったのは、数日前にフラれたあの一件。


それよりもっと衝撃的だったのは、自らのフシダラさ加減。しかも、別れた直後なんて事実、いったい誰に言えるのだろうか……。


浅い眠りから覚醒すると、どっと疲れが増していく。それでいて一度目覚めたら、もう眠りにつけないのが辛いところ。


これもきっと、私を引き寄せて離すまいとする腕の重みと、気だるいセックス後の余韻が続いているから。


無我夢中だったことを示すように、腰には鈍い痛みを感じる現在。こんなところにも老化現象は現れるのか、と思わず苦笑してしまう。


ホント容赦ないわ……なんて恨めしく思いながら、傍らで規則正しい寝息を立てる絶倫オトコをチラリと窺った。


日々レンズ越しに見ているその顔も、この時ばかりはドラゴンの素顔を拝める機会。


年齢よりも落ち着いた印象を与えるのは、やっぱり眼鏡の効力が大きいようだ。


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