時を止めるキスを


必ず私を横たえさせたあとで取り払うノン・フレームの眼鏡は、ベッド脇のサイド・テーブルにインテリアの如く置かれている。


時間が気になり、再びサイドテーブルに目を向けると、備え付けのデジタル時計は4時を過ぎたところ。


まだ眠っても問題ないのに、身体の疲れとは裏腹に眠気はなくなっていた。ぼーっとしているとエアコンの風が冷たく感じ、さらしていた肌がぶるりと震えてくる。


いつの間にか彼が掛けてくれたらしいシーツを両手で手繰り寄せながら、再びベッドに深く潜った。


いま私とドラゴンがいるのはホテルの一室で、ダブル・ベッドにふたりして寝転んでいる。


ちなみに宿泊施設のリネン特有のパリッと糊の効いた感触が、寝具に柔らかさを求める私は昔から好きじゃない。


旅行に行くと、決まって寝つきが悪くなるのもこれが理由なんだけど。ここに訪れた目的がセックスという不埒な女が、そんな文句を言えるわけもない。


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