Blood Smell
人間だから
本来の姿で私を守るように立っている先生



鋭い威嚇の声が辺りを圧迫する



エリザベスがユラリ…と立ち上がった


美しい顔は絶望と怒りで歪み


形のいい唇からは血が一筋垂れていた



「な…んで…?
どうしてそんな人間をかばうのよっ!?」



怒りに震える声が響く



「…お前に言う必要はない。」



先生が吐き捨てるように言う



「あなたは…いつも私の味方で、私の傍にいてくれたじゃない…―。」



赤い涙が一筋
エリザベスの雪のように白いほほをつたう



「あなたは変わった…っ!全部、その人間のせいっっ!」


ブワッとエリザベスの髪の毛が逆立った

目はつり上がり
瞳は血走っている



標的である私に視点を合わせると低く身構えて牙を覗かせた



「やめろ。
エリザベス。
お前を…殺したくはない。
俺のフィアンセ…エリザベス・G・グレイス。」


先生の穏やかな言葉が
エリザベスの形相を解く



変わりに私に降ってきた
胸に突き刺さる言葉


“俺のフィアンセ”


足を粉々に砕かれたほうがよかった…


そんな痛みは我慢できる


この
心が打ち砕かれるような痛みに比べれば…
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